12歳の夏休み、家の緑地をTSUNAGにしてみた
自宅兼事務所の企業緑地を、自由研究で調べて、本当に認定まで目指してみる
「今年の自由研究、どうしよう。」
小学6年生、12歳のユウは、夏休みの宿題を前に考えていた。
ユウの家は、自宅であると同時に、父親の会社の事務所でもある。仕事の打合せで人が来ることもあるし、庭を眺めながら話をすることもある。
ユウにとっては、それが普通だった。
庭も同じだ。小さい頃から毎日見てきた。木が育ち、季節によって景色が変わる。雨が降れば庭の様子も変わる。鳥やチョウが来ることもある。
その庭を設計したのが、中山さんだった。
中山さんは造園・ランドスケープの仕事をしている。この土地にどんな木を残すのか、どこに植えるのか、雨が降ったときに水がどう動くのか、人がどこで過ごすのか。そんなことを考えながら庭をつくった。
ある夏の日、父親が中山さんと庭を見ながら話していた。
「この緑地、最近よく聞くTSUNAGの考え方で整理してみても面白いですね。」
「TSUNAGって何?」
ユウが聞いた。
「国土交通省の緑地の認定制度だよ。」
「庭にも認定があるの?」
「正確には、庭そのものを認定する制度ではないんだ。企業などが緑地を確保して、どう管理して、どう価値を高めていくのか。その計画を認定する制度なんだよ。」
ユウは少し考えた。
「それ、自由研究にしていい?」
「いいよ。ただ、本当に認定を目指すなら、自由研究だからといって適当にはできない。」
「じゃあ、本当にやってみる。」
こうして、12歳の夏休みと、一つの企業緑地のTSUNAG認定プロジェクトが始まった。
1.まず、TSUNAGとは何か
ユウは、国土交通省とTSUNAGの公式資料を読むところから始めた。
TSUNAGの正式名称は、優良緑地確保計画認定制度。都市緑地法に基づき、民間事業者等による良質な緑地確保の取組を国土交通大臣が評価・認定する制度だ。新しく緑地をつくる場合だけでなく、既存緑地の質を確保・向上させる取組も対象になる。
出典: 国土交通省|優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)
評価するのは、緑地の「量」だけではない。
気候変動対策、生物多様性の確保、Well-being、地域の価値向上、マネジメント・ガバナンス、土地・地域特性などから、緑地の価値を評価する。スコアによる評価は、必須項目70点、選択項目50点、地域の価値向上30点の合計150点満点で構成され、緑地面積や緑地割合などの量の要件と組み合わせて認定ランクが決まる。
「じゃあ、木がいっぱいあればいいわけじゃないんだ。」
「そう。大事なのは、その緑地がどんな価値を持っていて、それをどう維持・向上させていくのかまで説明できること。」
ユウは自由研究のノートに書いた。
TSUNAGは、緑地の量と質、そしてその後の管理まで見る。
2.そもそも、この土地は対象になるのか
中山さんが最初に確認したのは、植物ではなかった。
「まず、制度の対象になるかを確認しよう。」
TSUNAGは、どんな庭でも申請できるわけではない。対象となる区域、申請主体、土地の権利関係、緑地面積などを確認する必要がある。
対象は民間事業者等が行う緑地確保の取組で、新しく緑地を創出する場合だけでなく、既存緑地の質を確保・向上させる場合も含まれる。
ユウの家は、自宅兼事務所。父親の会社がそこで事業を行っている。
「だから、ここは単なる住宅の庭ではなく、企業が利用する敷地内の緑地として検討できる。」
ただし、自宅兼事務所だから自動的に対象になるわけではない。土地を誰が所有しているのか、会社がどのような権原で使用しているのかも確認する。
実際の申請では、土地等の権原を証明する書面の提出が必要になる。
「私は調べる人で、申請するのは会社なんだね。」
「そう。そこを最初に整理しておこう。」
3.2027年度から、500㎡になる
次に確認したのが面積だった。
2027年度から、緑地面積の要件は1,000㎡以上から500㎡以上へ緩和される。一方、緑地割合は10%以上を維持する。
出典: 国土交通省|TSUNAGの評価基準等の見直しについて
「500㎡の土地があればいい?」
「違うよ。」
中山さんは図面を広げた。
「500㎡というのは、対象区域の中で確保する緑地の面積。さらに、その緑地が対象区域の10%以上になっている必要がある。」
例えば対象区域が2,000㎡なら、緑地500㎡で緑地割合は25%。
対象区域が4,000㎡なら12.5%。対象区域が8,000㎡なら6.25%なので、500㎡以上あっても10%には届かない。
最初に確認するのは、対象区域の面積、緑地面積、緑地割合だ。
4.何を「緑地」として数えるのか
「じゃあ、庭なら全部緑地?」
「そこもちゃんと整理する。」
対象区域を決め、その中でどこを緑地として算入するのかを図面上で明確にする。
中山さんは敷地図や測量資料を確認し、区域境界と緑地の範囲を整理した。さらに、付近見取図や配置図を作り、緑地面積と緑地割合の算定根拠もまとめる。
現在の申請では、付近見取図、配置図、権原書面、従前の状況との比較資料、敷地面積及び緑地面積の算出根拠などが提出資料として求められている。
ここで作った図面が、後の評価資料の土台になる。
5.今の庭を調査する
ここから、ようやく庭の調査が始まる。
ユウは毎日この庭を見ている。でも今回は、ただ眺めるのではなく、申請資料にできるように現況を整理する。
既存樹木や植栽、草地、水に関係する場所、人の利用状況などを現地で確認し、配置図に反映する。写真も、庭の美しさを見せるためだけでなく、申請時点の状態を第三者が確認できる記録として残す。
「写真にも意味があるんだ。」
「そう。いつ、どこを撮ったのか分かるようにしておこう。」
6.この土地がどうできたのかを調べる
「この土地って、昔から今の庭だったの?」
「そこも調べよう。」
古い航空写真、地形図、過去の土地利用、昔の写真などを調べる。さらに、周辺の自然環境、社会的状況、自治体の行政計画、関係法令なども確認する。
TSUNAGでは、自然環境・歴史文化、社会的状況、法令、行政計画などを把握し、それを緑地計画に反映することが評価される。
「昔を調べるのは、思い出のためじゃないんだ。」
「そう。今の計画が、この土地の特性を踏まえたものなのか説明するためだよ。」
7.生物多様性を調べる
ユウは、庭で確認できる植物、鳥、チョウ、ハナバチなどを記録した。
ただ、中山さんは「種類をたくさん見つけること」だけを目的にしなかった。
この土地にどのような植物が生育しているのか、その植物をどのような生きものが利用しているのか、樹林・草地・水辺などがどのような生息・生育環境をつくっているのかを確認する。
さらに、地域に根差した植生をどう保全・創出するか、外来種をどう管理するか、化学農薬・肥料の使用をどう考えるかまで整理する。
TSUNAGでは、生物多様性について、まとまりのある緑地、階層構造、エコトーン、生息・生育環境、地域に根差した植生、生態系ネットワーク、外来種対策など、複数の項目から評価する。
「珍しい生きものがいるかどうかだけじゃないんだ。」
「そう。この土地で生きものが暮らせる環境を、どう守っていくかが大事なんだ。」
8.2027年度の新しい評価基準を当てはめる
調査結果をもとに、ユウたちは2027年度の評価基準を確認した。
2027年度からは、緑地面積の要件が500㎡以上に緩和される。その一方で、雨水の貯留・浸透は必須項目に変更される。
従来の「緑地雨水再利用率」は見直され、「降雨を活用した潅水」を評価する仕組みになる。
暑熱対策では、緑陰による熱中症対策が地域の価値向上に関する評価項目として高く評価され、沿道緑化も評価対象として強化される。
つまり、2027年度からは、面積要件が緩和される一方、雨水や暑熱など、緑地が持つ具体的な機能をどう計画するかがより重要になる。
出典: 国土交通省|TSUNAGの評価基準等の見直しについて
「この庭なら、雨と木陰はちゃんと考えた方がいいね。」
「そう。土地を見てから評価項目を考えるんだ。」
9.何点を目指すのか
ユウは評価表を見た。
TSUNAGでは、必須項目70点、選択項目50点、地域の価値向上30点を合わせた150点満点で評価する。量の要件を満たしたうえで、合計50点以上を得た事業が認定対象になる。
さらに、緑地割合と合計点数によって認定ランクが決まる。
緑地割合10%以上20%未満かつ合計50~74点なら★、20%以上30%未満かつ75~99点なら★★、30%以上かつ100点以上なら★★★。
量と質の両方で、それぞれのランク条件を満たす必要がある。
出典: 国土交通省|TSUNAGの評価基準等の見直しについて
「じゃあ、★★★にしよう!」
「点数のために庭を変えるんじゃないよ。」
中山さんはそう言った。
「この土地に本当に必要なことを計画する。その結果として、評価されるんだ。」
10.5年後、この緑地をどうしたい?
ここで初めて、中山さんが未来の話をした。
「5年後、この庭をどうしたい?」
ユウは考えた。
今ある木はできるだけ残したい。夏も過ごしやすくしたい。生きものが利用できる環境をもっと良くしたい。雨水をできるだけ敷地内で受け止めたい。会社に来る人にも、この庭を気持ちよく使ってほしい。
その内容を、企業緑地の5年間の目標として文章にまとめた。
TSUNAGでは、事業の目的・目標を明確にし、その実現に向けた整備・維持管理計画をつくることが重要になる。
ここで、単なる「庭の維持」ではなく、5年間で何を維持し、何を改善し、どんな状態を目指すのかを明確にした。
11.整備・維持管理計画をつくる
5年間の目標が決まったら、実際の行動に落とし込む。
既存樹木なら、どの樹木を残し、どのように育成・管理するか。植生なら、どの場所をどう管理し、どんな植物を保全・創出するか。雨水なら、どこで貯留・浸透させるか。暑熱対策なら、どの緑陰を維持するか。
さらに、誰が管理するのか、専門家に何を依頼するのか、どの時期に作業するのか、5年間でどれだけ費用が必要なのかまで整理する。
計画期間は認定日から5年間で、資金計画には5年間の管理費などを記載する。
12.モニタリング方法を決める
「5年後、良くなったってどうやって分かる?」
ユウの質問に、中山さんは答えた。
「だから、最初にモニタリング方法を決める。」
生物多様性なら、植物や生きものをどこで、いつ、どう記録するか。
雨水なら、貯留・浸透の状態をどう確認するか。
暑熱対策なら、緑陰の状態や利用状況をどう確認するか。
そして、結果を記録するだけではなく、必要なら翌年の管理方法を変える。
認定後の定期報告では、事業全体の進捗、評価項目に関する取組状況、設定したアウトカム指標のモニタリング結果を報告することが求められている。
出典: 国土交通省|令和8年度 優良緑地確保計画認定(TSUNAG認定)申請要領
13.申請資料をつくる
実務上は、まず対象区域・権原・面積を確認し、次に現況と従前状況を整理する。その結果を踏まえて評価項目を確認し、5年間の目的・目標、整備・維持管理計画、実施体制、資金計画、モニタリング計画をつくる。最後に、それぞれを裏付ける根拠資料を評価項目ごとに整理する。
ここまで来て、ユウはようやく「自由研究の資料」と「認定申請の資料」が違うことを実感した。
申請では、申請書、事業概要、集計表、評価項目ごとの根拠資料、付近見取図、配置図、権原書面、従前の状況との比較資料、敷地面積及び緑地面積の算出根拠などを準備する。
事業概要は指定のPowerPoint、集計表は指定のExcelを使って作成する。評価項目ごとの根拠資料も指定の様式で整理し、提出する。
ここで特に重要なのが、評価項目と根拠資料を対応させること。
一つの評価項目について、その項目を評価するために必要な根拠資料を明確にする。別の評価項目で同じ資料を提出していても、それだけで別の項目の根拠になるとは限らないため、それぞれの項目で必要な説明を確認しておく。
つまり、ユウたちがつくる資料は、
「この評価項目について、なぜこの計画が評価できるのか」
を審査する人が追える形にする。
14.従前の状態を調べる
ユウが集めていた昔の航空写真や写真も、申請資料の一部になった。
TSUNAGでは、計画後の緑地だけでなく、従前の土地利用との比較も行う。
現在の手引きでは、従前の緑地量を把握し、計画後の状態と比較する。ネイチャーポジティブの考え方から、原則として従前より緑地量を減少させる事業は認定対象としない考え方がとられている。一定の例外については制度上のルールに従って確認する必要がある。
「だから昔を調べたんだ。」
「そう。今の計画が、緑地をどう変えるのかを説明するためだよ。」
15.地域との関係を調べる
次は、敷地の外を見る。
周辺の公園や緑地、街路樹、河川、樹林などを確認し、この企業緑地が地域の緑のネットワークの中でどんな役割を持てるかを考える。
さらに、地域住民等とのコミュニケーション、公開性、安全性、ユニバーサルデザイン、地域コミュニティ、人々の交流・滞在なども評価対象になる。
2027年度からは、沿道緑化についても地域の価値向上の観点から評価が強化される。
16.評価表を完成させる
調査と計画がそろったら、評価項目を一つずつ確認する。
この項目は該当するか、該当するならどの取組で対応するか、それを証明する資料は何か、5年間どう維持するか、最終的に何点になるかを確認する。
中山さんは、評価表と根拠資料の番号を対応させて整理した。
「これなら、審査する人が評価表から根拠資料まで追える。」
ユウは、自由研究の「調べたこと」を、正式な申請資料に変える作業を横で見ていた。
17.申請前に、事前相談
「できた!」
ユウが言う。
「じゃあ申請?」
「その前に、事前相談。」
TSUNAGでは、申請前または申請受付期間内に、事前相談を行うことができる。認定対象区域、従前の状況との比較、緑地面積・緑地割合などについて確認することができる。
2026年度は、4月から6月が事前相談期間、7月から8月が申請受付期間。その後、審査を経て、2027年2月頃の認定が予定されている。2027年度に実際に申請する場合は、その年度の募集要領で最新の日程を確認する必要がある。
「思いついてから申請するんじゃなくて、かなり前から準備しておくんだ。」
「そう。特に自然環境の調査や従前資料の整理は、時間がかかるからね。」
18.申請登録をする
事前相談の内容を反映したら、いよいよ申請登録。
現在の申請方法では、TSUNAG専用サイトの申請ページから申請者情報などを登録し、その後、案内されたシステムを通じて申請書類一式を提出する。
この段階では、まだ手数料を払わない。
2026年度の申請要領では、手数料の納付は本申請の段階とされている。
出典: 国土交通省|令和8年度 優良緑地確保計画認定(TSUNAG認定)申請要領
19.予備審査
申請受付の次は、予備審査。
審査事務局や審査委員が提出書類を確認し、不足資料や確認事項があれば追加提出を求める。
「区域境界が分かりにくい」「この評価項目の根拠資料はどれか」「この目標なら、モニタリング方法をもう少し具体的に」といった確認が入ることもある。
不足資料の提出などは本申請までに完了する必要があり、予備審査が完了しなければ原則として本申請には進めない。
ユウは、このとき初めて、「正しいことを書く」だけでは足りないことを知った。
第三者が読んで、確認できる資料にする。
それが申請だった。
20.本申請と手数料
予備審査が完了したら、本申請へ進む。
本申請では、正式な申請書類を提出し、手数料を納付する。
2026年度の初回申請手数料は120万円/件、更新・変更申請は40万円/件。
なお、これは2026年度の金額なので、2027年度に実際に申請するときは、その年度の申請要領を確認する。
「120万円……。」
ユウは目を丸くした。
「学校の自由研究ではないからね。」
中山さんが笑った。
21.本審査
本申請が終わると、本審査へ進む。
まず事務局が提出書類を確認し、その後、審査委員会による審査が行われる。
計画が制度の指針に適合しているか、評価項目に対する取組内容と根拠が妥当か、5年間の計画として実現可能か、といった点が確認される。
TSUNAGの公式な審査フローは、申請受付 → 予備審査 → 本申請 → 本審査 → 認定。事前相談は、その前段階で行うことができる。
ここで中山さんが一番気にしたのは、点数だった。
「もちろん点数は大事。でも、それだけじゃない。」
「じゃあ何?」
「この計画が、この土地に本当に必要なのか、その結果としてどの点数になるかだ。」
22.そして、認定
数か月後。
ユウが学校から帰ってくると、父親が待っていた。
「中山さんから連絡があった。」
「どうだった?」
「認定されたよ。」
ユウは庭に出た。
いつもの庭だった。
でも、夏休みの最初とは違って見えた。
この木をどう管理するか、この緑地をどう育てるか、雨水をどう扱うか、生きものをどう観察するか、人がどう使うか、それを5年間どう続けるか。全部、計画になっている。
本審査を経て国土交通大臣が認定し、認定内容は公表される。
「ただの庭だったのに。」
ユウがつぶやいた。
「最初から、ただの庭じゃなかったんじゃない?」
父親がそっと囁いた。
23.認定されたら、終わりではない
「これで自由研究も終わりだね。」
「いや、ここからじゃないかな。」
TSUNAGは、認定して終わる制度ではない。認定事業者には、毎年度、認定優良緑地確保計画の実施状況を国土交通大臣へ報告することが義務づけられている。
報告するのは、事業全体の進捗、評価項目に関する各取組の実施状況、設定したアウトカム指標のモニタリング結果だ。
さらに、認定期間中に計画を変更する場合には、変更認定等の手続きもある。
つまり、TSUNAGは「認定証を取ったら終わり」ではない。
5年間、計画を実行して、その結果を確認する制度なのだ。
24.TSUNAGを取得すると、企業にどんなメリットがある?
ユウは最後に父親へ聞いた。
「そこまでして、会社は何のためにTSUNAGを取るの?」
父親は中山さんから聞いたという事を答えた。
「まず、会社が確保している緑地の価値を、第三者に説明しやすくなる。」
TSUNAGには、良質な緑地の整備等に対する支援との連携があり、無利子の都市開発資金や、グリーンインフラ活用型都市構築支援事業などを活用できる場合がある。
また、TSUNAG認定はGRESBの評価やTNFDの建設・不動産等分野向け追加ガイダンスにも位置づけられている。企業にとって、緑地の取組を不動産・ESG・自然関連情報の文脈で説明する材料になり得る。
さらに2026年には、TSUNAG認定とDBJ Green Building認証との連携が始まった。
DBJ Green Building認証では、TSUNAG認定が生物多様性への配慮の評価に位置づけられ、建物と緑地を含むプロジェクト全体の評価や資金調達との連携にも活用できる可能性が示されている。
出典: 国土交通省|TSUNAG認定とGRESB・TNFDガイドラインとの連携
出典: 国土交通省|TSUNAG認定とDBJ Green Building認証との連携
「庭の認定なのに、会社の不動産や資金調達にも関係するんだ。」
「企業が土地を持つということは、そういうことでもあるんだよ。」
25.そして、ユウは初めてSITESとTNFDを知った
「中山さんって、海外認証のSITESもやってるの?」
自由研究を進める中で、ユウは初めて中山さんの仕事を詳しく知った。
「そう。SITESは、ランドスケープそのものを評価する国際的な認証だよ。」
「TSUNAGとは違う?」
「違う。TSUNAGは、日本の都市緑地について、企業等が行う良質な緑地確保の計画を国が認定する制度。SITESは、ランドスケープの計画・設計・施工・運用を評価する国際認証。世界中で使われている。SITESの方が、さらに膨大な調査、計画、そしてそれに伴う資料を纏める必要があるんだ。その分、認証の希少性価値は高い。」
「じゃあ、TNFDは?」
「TNFDは、企業が自然にどう依存していて、どんな影響を与えていて、どんなリスクや機会があるのかを整理して、自然関連情報の開示につなげるための枠組みだよ。」
中山諒二造園設計|TNFDとSITESから考える「自然と共生する場所」
ユウは少し考えた。
「じゃあ、同じ自然の話でも、見ているものが違うんだ。」
「そう。でも企業が土地を持って事業をしているなら、だんだんつながってくる。」
実際、国土交通省はTSUNAGについて、GRESBとの連携とともに、TNFDの建設・不動産等分野向け追加ガイダンスにおける位置づけを公表している。
出典: 国土交通省|TSUNAG認定とGRESB・TNFDガイドラインとの連携
26.12歳の自由研究が、企業緑地のプロジェクトになった
最初は、夏休みの自由研究だった。
ところが実際には、制度の対象かどうかを確認し、土地と権利関係を調べ、対象区域と緑地面積を確定し、現在の状態を記録した。
さらに、土地の履歴と地域の状況を調べ、生物多様性や雨水、暑熱、人の利用を評価し、2027年度の基準を確認した。
その結果をもとに、評価項目を整理し、5年間の目標と維持管理計画をつくり、モニタリング方法を決めた。
そこから申請書類と根拠資料を作成し、事前相談を経て申請。予備審査で修正し、本申請を行い、本審査を経て認定された。
ユウは、庭について調べていたつもりだった。
でも、最後に分かったのは、
「この庭をどう未来につなぐか」
ということだった。
27.ユウにとっては、ずっと「普通の家」だった
ユウ自身は、自分の家が特別だとは思っていなかった。
自宅があり、父親の会社の仕事場があり、庭がある。それがユウにとっては普通だった。
でも、その土地をTSUNAGの視点から見直してみると、そこには「暮らす場所」と「働く場所」と「自然が残る場所」が重なっていることが分かった。
庭をつくった中山さんも、もう一度この土地を見直した。
「最初からTSUNAGのためにつくった庭じゃない。」
TSUNAGのお祝いに来ていた中山さんはそう言った。
「でも、土地を読んで、人と自然の関係を考えて庭をつくる。そこから、さらに5年間どう育てるのかを計画する。そう考えると、TSUNAGの考え方につながってくる。」
ユウは庭を見た。
小さい頃から毎日見てきた庭だった。
でも、もう以前と同じには見えなかった。
12歳のユウが、最後に自由研究へ書いたこと
ユウは、最後のページを開いた。
タイトルは、
「12歳の夏休み、家の緑地をTSUNAGにしてみた」
その下に、こう書いた。
庭について調べていたら、会社の土地の未来を考えることになった。
最初は、TSUNAGという言葉の意味も知らなかった。
でも、調べていくうちに、緑地は「木がある場所」ではなく、暑さを和らげたり、雨を受け止めたり、生きものを支えたり、人が過ごしたりする場所だと分かった。
そして、その価値は、そこにあるだけでは続かない。
これからどう管理するのかを考えて、5年間の計画にして、実際に続けていく必要がある。
私にとっては自由研究だったけれど、会社にとっては、この土地を未来につなぐための仕事だった。
最後に、中山さんが付箋に一言書いて張り付けた。
「5年後にもう一度、この庭を見てみよう。」
おわりに
TSUNAGは、単純に「緑の多い場所」を認定する制度ではない。
その土地が制度の対象になるのかを確認し、対象区域と緑地面積を整理し、現在の緑地と従前の状態を把握する。
そこから、その土地の自然・歴史・地域特性を踏まえて、どんな価値を高めるのかを考える。
そして、評価項目に沿って5年間の目標と整備・維持管理計画をつくり、必要な根拠資料とともに申請する。
事前相談、申請受付、予備審査、本申請、本審査を経て認定されても、それで終わりではない。
認定後も計画を実行し、毎年度その進捗とモニタリング結果を報告する。
だからTSUNAGは、緑地に「星をつける」だけの制度ではない。
「緑地をどう読み、どう育て、どう未来につなぐか。」
そのための一つの仕組みなのだ。
企業にとっても、敷地の緑地は単なる「緑化」ではない。
従業員や来訪者が過ごす場所であり、生きものの生育環境であり、雨水を受け止め、暑さを和らげ、地域との接点にもなる。
そして、その価値を国の制度によって評価・認定してもらうことで、企業の不動産やESG、自然関連情報など、より広い文脈で説明できる可能性が生まれる。
中山諒二造園設計では、庭やランドスケープを単に植物を植えることとは考えていません。
その土地の地形、土、水、光、風、植生、生きもの、人の使い方を読みながら、その場所に合った環境をつくり、時間をかけて育てていく。
そして必要に応じて、TSUNAGやSITES、自然共生、TNFDなどの考え方を、実際の土地や企業活動につなげていく。
「庭をつくることから、その土地の未来をつくることへ。」
それが、私たちが考える企業緑地です。
参考・出典
国土交通省|令和8年度 優良緑地確保計画認定(TSUNAG認定)申請要領
国土交通省|TSUNAG認定とGRESB・TNFDガイドラインとの連携


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