Nature-based Solutions(NbS)とは? ― 自然の力を活かす、これからのランドスケープ ―

自然の中には、誰かが一つひとつ設計したわけではないのに、一つの美しい風景として成立している場所があります。

光の入り方によって植生が変わる。
水が集まる場所には、別の植物が生まれる。
岩や倒木、落ち葉、土の状態が、それぞれ小さな環境をつくっている。

そこには明確な設計者も施工者もいません。

けれど、長い時間をかけて、水、土、植物、動物、地形、光、風、そして攪乱が作用し合い、一つの環境ができあがっています。

自然は、最初に完成形を描いてからつくられるものではありません。

さまざまな要素が関係し、変化し続ける中で、その場所の環境が形づくられていきます。

私は幼い頃から山を歩き、自然の中で過ごしてきました。

そして造園の仕事をするようになってから、同じ風景を見る目が少しずつ変わってきました。

植生を見るときには、その植物だけを見るのではなく、なぜそこに生えているのかを考える。

石を見るときには、形だけではなく、水の流れや地形との関係を見る。

土を見るときには、植物を支える基盤として、その先にある水や生態系まで考える。

山を歩くことは、自然を観察するだけでなく、そうした関係性を身体で学ぶ時間でもあります。

そして、この「自然を個々の要素ではなく、一つのシステムとして捉える」という視点は、近年注目されている Nature-based Solutions(NbS:自然を活用した解決策) という考え方にもつながっています。


Nature-based Solutions(NbS)とは何か

Nature-based Solutions、略してNbSは、気候変動、生物多様性の損失、洪水、暑熱、食料や水の問題など、社会が抱えるさまざまな課題に対して、自然の仕組みを活かしながら対応していこうという考え方です。

2022年の国連環境総会(UNEA 5.2)では、決議5/5「持続可能な開発を支えるNature-based Solutions」において、NbSについて政府間で合意された定義が採択されました。

UNEPでは、NbSを、自然または改変された陸域・淡水域・沿岸域・海域の生態系を保護・保全・回復し、持続的に利用・管理することで、社会・経済・環境上の課題に効果的かつ適応的に対応しながら、人間のウェルビーイング、生態系サービス、レジリエンス、生物多様性にも利益をもたらす行動としています。

UNEP|Overview of Nature-based Solutions

UNEA 5.2|Nature-based solutions for supporting sustainable development

つまり、NbSは単に「自然を使う」ということではありません。

社会の課題を解決しながら、同時に自然にも利益をもたらす。

そこに大きな特徴があります。

例えば、暑さを和らげるために樹木を植えること、洪水対策として湿地や緑地を活用すること、雨水を自然に浸透させること、生態系のつながりを回復することなどが考えられます。

しかし、自然を取り入れたからといって、それだけでNbSになるわけではありません。

重要なのは、

その取り組みが、どのような社会的課題に対応し、自然にどのような利益をもたらし、周囲の環境や人々とどのような関係をつくるのか。

ということです。

だからこそNbSは、単なる緑化技術や植栽手法ではありません。

自然と社会を一つのシステムとして捉え、その両方にとってより良い状態をつくっていくための考え方なのです。


「自然を使えばNbS」ではない

例えば、

  • 暑さを和らげるために木を植える
  • 洪水対策として雨水を貯留する
  • コンクリート護岸を植生護岸に変える
  • 屋上を緑化する
  • 都市に緑地を増やす

こうした取り組みは、自然の力を活かした対策です。

しかし、

「暑いから木を植える」
「雨が降るから雨庭をつくる」
「生物多様性のために植栽する」

というように、課題ごとに自然を当てはめるだけでは、NbSの本質を十分に捉えられません。

自然は、一つの機能だけを提供しているわけではないからです。

一つの場所において、水、土壌、植物、生物、人間の利用、経済、周辺環境などが互いに関係しています。

だからこそ、NbSでは、個々の機能だけではなく、その場所を取り巻く関係性そのものを見ることが重要になります。

そのための共通の枠組みとして、IUCN(国際自然保護連合)は「IUCN Global Standard for Nature-based Solutions」を策定しています。

現在は、2025年に公表された**第2版(Second Edition)**が現行版です。

IUCN|Global Standard for Nature-based Solutions

IUCN|Global Standard for Nature-based Solutions: Second Edition


IUCN Global Standard ― NbSを考える8つのCriteria

IUCN Global Standard 第2版では、NbSを評価するための8つのCriteriaと27のIndicatorsが示されています。

これは単なるチェックリストではありません。

NbSが、

  • 本当に社会的課題に対応しているのか
  • 自然を生態系として捉えているのか
  • 生物多様性にプラスの効果をもたらすのか
  • 経済的に成立するのか
  • 関係者が適切に関われているのか
  • 複数の利益やトレードオフをどう扱うのか
  • 変化に応じて管理できるのか
  • 長期的に社会へ定着していくのか

まで含めて考えるための枠組みです。

ここでは、この8つのCriteriaをランドスケープの視点から見ていきます。


1.社会的課題に効果的に対応する

NbSの出発点は、何のために自然を活かすのかを明確にすることです。

気候変動なのか。洪水なのか。都市の暑熱なのか。水資源なのか。食料なのか。生物多様性なのか。

あるいは、それらが複合した課題なのか。

重要なのは、単に「自然を増やす」ことではなく、具体的な社会的課題との関係を明確にすることです。

例えば、都市の住宅や企業緑地で夏の暑さを和らげ、人が過ごしやすい環境をつくることを考えてみます。

単純に樹木の本数を増やすだけではありません。

建物や舗装によって熱がこもっている場所を確認し、どこから日射が入るのか、風がどのように抜けるのか、雨水がどこに集まるのか、土壌がどのような状態なのかを見る。

そのうえで、適した場所に樹木を配置し、地表をできるだけ土や植栽で覆い、雨水が地中に浸透できる環境をつくる。

樹木による日陰、植物の蒸散、土壌への雨水浸透、植生による地表面の被覆など、複数の自然の機能を組み合わせて、都市の課題に対応していく

これは、単に「緑の多い庭」をつくることとは少し違います。

その場所が抱えている課題を読み取り、その解決に自然の機能をどう活かせるかを考える。

そこからランドスケープの設計を始めることが、NbSの第一歩なのだと思います。


2.生態・経済・社会・文化を含むシステムとして捉える

NbSは、一つの敷地だけを見て成立するものではありません。

自然は、敷地境界の中だけで完結しないからです。

一つの庭に降った雨は、その敷地の中だけでなく、周辺の地形や水路、河川へとつながっていきます。

一つの緑地に生息する生きものも、その場所だけで暮らしているとは限りません。

周囲の公園や街路樹、河川、森林などを移動しながら、より大きな生態系の中で生きています。

同時に、その場所は経済活動や人の暮らし、地域の文化とも関係しています。

そのため、NbSでは、目の前の敷地だけを見るのではなく、その場所がより大きな環境・社会システムの中でどのような位置にあるのかを捉えることが重要になります。

例えば住宅の庭をつくる場合でも、その庭だけを「自然豊か」にすることだけが答えではありません。

周辺にどのような緑地があるのか。

近くに河川や水路があるのか。

斜面や森林とつながっているのか。

雨水はどちらへ流れていくのか。

鳥や昆虫などの生きものが移動できる場所はあるのか。

その一方で、そこに暮らす人は庭をどのように使いたいのか。

維持管理を誰が担うのか。

どの程度の費用をかけられるのか。

地域にはどのような文化や景観があるのか。

そうした条件まで含めて考えることで、植栽の選び方、土のつくり方、水の扱い方、塀や舗装のつくり方まで変わってきます。

「この敷地をどうするか」だけではなく、「この場所は、より大きな自然と社会のシステムの中でどのような位置にあるのか」。

そこまで見ることが、NbSに求められている視点です。


3.生物多様性と生態系の健全性にプラスの変化をもたらす

NbSは、人間にとって便利であればよいわけではありません。

その結果として、生物多様性や生態系の健全性が損なわれてしまえば、NbSとは言えません。

現行のIUCN Global Standardでは、生物多様性の状態にプラスの変化をもたらし、生態系の健全性を高めること、そして生態系の連結性を含めて考えることが重視されています。

例えば都市の緑化でも、単純に緑被率を増やせばよいわけではありません。

どのような植物を使うのか。

その植物は、その地域の環境に適しているのか。

どのような生物が利用できるのか。

周辺の緑地や水辺とつながっているのか。

土壌や水の循環が維持されるのか。

整備によって既存の生態系を損なうことはないか。

こうしたことまで考える必要があります。

「緑があるか」ではなく、「どのような生態系がそこに生まれるのか」。

そこまで考えて初めて、自然を活かしたランドスケープと言えるのだと思います。


4.経済的・財務的に実行可能である

自然にとって良いだけでは、その取り組みを長く続けていくことはできません。

施工費だけでなく、維持管理費、更新費用、得られる便益なども含めて、長期的に成立する仕組みなのかを考える必要があります。

例えば、植栽によって日陰をつくり、夏の暑さを和らげることができたとしても、その樹木がその場所に適しておらず、頻繁な剪定や灌水、植え替えが必要になれば、長期的には大きな維持管理負担になります。

逆に、その土地の環境や将来の成長を考えて樹木を選び、適切な土壌環境を整え、過度な管理を必要としない植栽をつくることができれば、自然の成長そのものを環境価値につなげながら、管理負担を抑えていくことができます。

つくって終わりではなく、長く機能し続ける環境として成立させる。

それも、NbSにおけるランドスケープの重要な役割だと考えています。


5.包摂的・透明で、人々を力づけるガバナンスに基づく

自然環境は、専門家だけで決められるものではありません。

土地を使う人、周辺住民、行政、土地所有者、事業者、管理者、専門家など、さまざまな主体が関係します。

そのため、NbSでは、誰が意思決定に関わるのか、どのように意見を聞き、どのように合意を形成するのかというプロセスそのものが重要になります。

例えば、企業緑地を生物多様性に配慮した環境へ変えていく場合でも、専門家が「この植物が生態系に良い」と判断するだけでは十分ではありません。

そこで働く人にとって使いやすい場所なのか。

周辺住民にとってどのような価値があるのか。

管理する人にとって無理なく維持できるのか。

土地所有者や事業者は、どのような目的を持っているのか。

行政の計画や地域のルールとどのように関係するのか。

そうした異なる立場や知識を持つ人たちが関わり、それぞれの知識や権利、関心を尊重しながら環境をつくっていくことが求められます。


6.複数の利益とトレードオフを公平に調整する

自然を活かした取り組みでは、複数の利益を同時に生み出せる一方で、すべての利益を同時に最大化できるとは限りません。

例えば、生物多様性を高めるために植生を豊かにすると、人にとっては歩きにくくなったり、管理の手間が増えたりすることがあります。

水をできるだけ地中に浸透させたい一方で、利用者の安全性や建物への影響を考えなければならない場合もあります。

企業緑地で生態系を豊かにすることと、従業員が快適に使える空間をつくることが、常に完全に一致するとは限りません。

NbSでは、こうした意図した効果と、意図しなかった影響の両方を見ながら、複数の利益の間に生じるトレードオフを公平に調整することが求められます。

だからこそ、何を優先し、どこに境界を設けるのかを、関係者と透明性をもって考える必要があります。

自然、人、経済、利用、安全など、複数の価値をどう両立させるか。

そこにランドスケープデザインの役割があります。


7.エビデンスに基づいて適応的に管理する

自然は、完成して終わるものではありません。

植物は成長し、土壌は変化し、水の流れも変わります。

予想していなかった植物が生えてくることもあれば、逆に、計画していた植物がうまく定着しないこともあります。

そのため、最初の計画を絶対視するのではなく、

観察する → 評価する → 管理を変える → また観察する

という循環が必要になります。

設計した環境を一方的に管理するのではなく、実際に起きている変化を読み取りながら、次の判断につなげていく。

自然を扱うということは、完成したものを固定して維持することではありません。

観察し、学び、必要に応じて変えていく。

その繰り返しによって、自然と人間の関係を少しずつ調整していくことなのだと思います。


8.実施・持続・普及を支える条件をつくる

どれほど優れたプロジェクトでも、一つの場所だけで終わってしまえば、社会全体の変化にはつながりません。

現行のIUCN Global Standardでは、NbSそのものの持続可能性だけでなく、NbSを実施し、継続し、社会の中に広げていくための条件を強化することがCriterion 8として位置づけられています。

例えば、企業が敷地内に生物多様性に配慮した緑地を整備したとしても、担当者が変わった途端に管理方針がなくなったり、別の計画によって緑地が失われたりすれば、その環境を長期的に維持することはできません。

そのためには、

  • 誰が管理するのか
  • どのような状態を目指すのか
  • 何を指標として確認するのか
  • 将来どのように管理方法を変えていくのか
  • 周辺の土地利用や地域の計画とどうつなげるのか

といったことまで考えておく必要があります。

さらに、一つのプロジェクトで得られた知識や経験を記録し、他の場所でも活かせるようにすることも重要です。

一つの庭、一つの企業緑地、一つの公園で得られた経験が、別の場所で応用される。

個別の取り組みが、地域の計画や企業の方針、政策、制度などに影響を与える。

そうすることで、NbSは一つのプロジェクトを超えて広がっていきます。


8つのCriteriaから見えてくるNbSの本質

ここまで8つのCriteriaを見てくると、NbSが単なる「環境配慮型の工法」ではないことが分かります。

社会的課題。自然と社会のシステム。生物多様性。経済性。ガバナンス。トレードオフ。適応的管理。

そして、それを支える制度や仕組み。

これらを一つのシステムとして考えることが、NbSには求められています。

つまり、

「自然を使って問題を解決する」のではなく、自然と社会の関係そのものを捉え直し、その中から解決策をつくっていく。

私は、NbSの本質はそこにあると考えています。


山を歩くことで見えてくるもの

私はこれまで、数多くの山を歩いてきました。

ブログで紹介している山歩きは、その中のほんの一部です。

山を歩いていると、同じ山の中でも、尾根と谷で環境が大きく違うことがあります。

少し光が変わるだけで植生が変わる。

水が集まる場所では土の状態が変わる。

倒木によって光が入り、それまで暗かった場所に新しい植物が生まれる。

人間から見ると「崩れた」「枯れた」「荒れた」と感じる状態が、別の生き物にとっては新しい環境の始まりになっていることもあります。

自然は、完成された状態を維持しているのではありません。

変化し続けることそのものが、自然の一部なのです。

だからこそ、自然を扱う仕事では、「完成形」をつくることだけを考えるのではなく、そこから先の変化を想像する必要があります。


庭もまた、時間の中で変化する

私が実際の庭づくりで大切にしていることも、こうした自然の見方と無関係ではありません。

例えば雑木の庭をつくるとき、植えた直後が完成ではありません。

5年後、10年後、その先までを考えて樹木や下草を配置します。

既存の地形を読み取り、現場で出てきた石を再利用する。

土を整え、植物が根を張れる環境をつくる。

雨が流れる場所、乾きやすい場所、日陰になる場所を見ながら植栽を考える。

人が歩く場所についても、地形や視線、庭との関係を見ながら、必要なところだけに手を入れる。

すべてを人工的に均質化するのではなく、その場所がもともと持っている条件を読み、その条件を活かしていく。

例えば世田谷の雑木の庭では、現場で発生した石を土留めや飛び石として再利用し、既存の地形を活かしながら庭をつくりました。

雑木の庭作り ~基礎編~

植栽では、モミジ、コナラ、ソロなどの高木に、アジサイ、アセビ、クロモジ、ヤブラン、フッキソウ、山野草などを重ね、時間とともに風景が深まっていくことを意図しています。

雑木の庭作り ~植栽編~

庭を「完成品」として考えるのではなく、

時間とともに変化する生きた風景

として考える。

それは、NbSをランドスケープに落とし込む上でも重要な視点だと思います。


自然を再現するのではなく、自然の仕組みを読む

造園では、「自然らしい景観」をつくることがあります。

しかし、自然らしい見た目をつくることと、自然の仕組みを活かすことは同じではありません。

植物をランダムに植えれば自然になるわけでもありません。

石を無造作に置けば自然になるわけでもありません。

大切なのは、

なぜそこにその植物が生えているのか。

なぜそこに水が集まるのか。

なぜそこでは土が残り、別の場所では流れていくのか。

なぜその場所に生きものが集まるのか。

という背景を読むことです。

そして、その場所に人間が介入するとき、その関係を壊すのではなく、できるだけ活かしながら新しい環境をつくる。

私は、それもランドスケープデザインの重要な役割だと考えています。


都市の中にも、自然の仕組みを組み込める

NbSは、山や自然公園だけの話ではありません。

むしろ、都市にこそ重要な考え方だと思います。

都市では、建物、道路、舗装、排水設備、インフラなどによって、自然の水循環や土壌、生態系が大きく変化しています。

そこで、

  • 雨水を土に戻す
  • 緑地をつなぐ
  • 地域の環境に適した植物を活かす
  • 土壌を健全にする
  • 木陰をつくる
  • 水辺を再生する
  • 生きものが移動できる環境をつくる

といった取り組みを、単独ではなく地域全体の仕組みとして考えていく。

重要なのは、NbSを「コンクリートの代わりに自然を使うこと」と考えないことです。

自然と技術を対立させるのではなく、それぞれの強みを組み合わせる。

自然の力だけですべてを解決するのではなく、必要なインフラや技術と組み合わせながら、自然が持つ機能をできるだけ活かしていく。

それもNbSの重要な考え方です。


山で学んだ自然を、都市へ

山と都市は、一見するとまったく違う場所です。

けれど、水が流れ、土があり、植物が育ち、人が活動するという意味では、そこには共通する仕組みがあります。

山で見ている自然を、そのまま都市に持ってくることはできません。

都市には都市の制約があります。

土地の所有、法規制、維持管理、安全性、経済性、人の使い方など、さまざまな条件があります。

だからこそ、自然をそのまま再現するのではなく、

自然の仕組みを読み、都市の条件の中でどう活かすか。

そこにランドスケープの役割があります。


NbSとこれからのランドスケープ

NbSは、新しい植栽手法の名前ではありません。

それは、自然と社会の関係を捉えるための一つの考え方です。

その土地にどのような自然があるのか。

人はその自然から何を得ているのか。

逆に、人間の活動は自然にどのような影響を与えているのか。

そして、これからどのような環境を残し、育てていくのか。

こうした問いを、敷地単位だけではなく、周辺の地域や生態系、時間の変化まで含めて考えていく。

それは、これからのランドスケープにとって、ますます重要になる視点だと思います。


SITESやTNFDとのつながり

NbSという考え方は、ランドスケープの設計だけに閉じたものではありません。

自然との関係をどのように捉え、土地や事業の意思決定にどう組み込んでいくのかという点では、SITESTNFDとも接点があります。

SITESは、ランドスケープや屋外空間を対象に、水、土壌、植生、材料、人の健康、施工、管理、モニタリングなどを横断的に評価する環境認証制度です。

私自身もSITES APとして、その考え方を造園やランドスケープの設計・施工に取り入れています。

SITES認証とは?|中山諒二造園設計

既存のランドスケープを対象とするSITES Existingについても紹介しています。

SITES Existing|中山諒二造園設計

一方、TNFDは、企業活動と自然との関係を捉え、自然への依存や影響、そこから生じるリスクや機会を考えるための枠組みです。

私自身も、TNFDについて、企業と自然との関係をどのように捉えればよいのか、そして自然を企業活動の「外側」にあるものとしてではなく、事業と関係する一つの環境としてどう考えていくのかを整理しています。

TNFDとは? 私たちと自然との関係を考える

NbS、SITES、TNFDは、それぞれ目的や役割の異なる考え方です。

しかし、その背景には共通して、

「自然を外部のものとして扱うのではなく、人間の活動と自然との関係を捉え直す」

という大きな流れがあります。

そして、その関係を最も直接的に扱うことのできる領域の一つが、ランドスケープです。

土、水、植物、生物、人、地域、そして時間。

これらを切り離して考えるのではなく、一つの環境として捉え、その場所が持つ自然の仕組みを読みながら空間をつくっていく。

それは、NbSをランドスケープに取り入れるということだけではありません。

これからの造園そのものを、自然との関係を設計する仕事として捉え直していくことなのだと思います。


中山諒二造園設計が考えるランドスケープ

中山諒二造園設計では、こうした考え方を、環境認証や企業の自然関連課題だけに限定するのではなく、実際の庭や緑地の設計・施工・管理にもつなげています。

その場所の地形や土、水の動き、光、風、既存の植生を読み、そこに適した植物や素材を選ぶ。

そして、完成した瞬間だけではなく、5年、10年、その先の時間の中で、植物や土壌、生きもの、人の使い方がどのように変化していくのかまで考えて空間をつくる。

それは、自然をそのまま再現することではありません。

自然の中で起きている循環や関係性を読み取り、その場所に新しい環境の基盤をつくることです。

庭を完成した「作品」として捉えるのではなく、土、水、植物、生物、人、地域、そして時間が関わり合いながら変化していく、生きた環境として捉える。

造園設計を軸としながら、環境・生態系への視点も活かし、その場所にとって本当に健全な環境とは何かを考え、設計し、つくり、育てていく。

それが、中山諒二造園設計が目指すこれからのランドスケープです。


自然を知り、場所を読み、時間を設計する

NbSを学ぶことは、自然を「利用する方法」を学ぶことではないのかもしれません。

むしろ、

自然をどのように理解し、
人間の暮らしとどのように関係づけ、
その関係を未来にどう残していくのか。

そのことを考えるきっかけなのだと思います。

山を歩く。庭をつくる。土に触れる。植物を植える。水の動きを見る。

そして、時間の経過を観察する。

そうした一つひとつの経験を重ねながら、その場所にしかつくれない風景を考えていく。

自然を知り、場所を読み、時間を設計する。

中山諒二造園設計は、そんな視点から、これからのランドスケープを考えていきます。


参考資料

UNEP|Overview of Nature-based Solutions

UNEA 5.2|Nature-based solutions for supporting sustainable development

IUCN|Global Standard for Nature-based Solutions

IUCN|Global Standard for Nature-based Solutions: Second Edition

IUCN|Second Edition Press Release(2025)