既存ランドスケープ空間に対するSITES Existing 認証のご紹介

SITES認証制度は、米国発祥のランドスケープ(屋外空間)に対する国際的に最も使用されている環境認証の制度であり、過去記事でご紹介させて頂いておりましたが、そのSITES認証に”既存敷地”を評価するその名も “SITES Existing” がPilot版(試験版)として運用がはじまっております。新築を評価する通常のSITES認証については、以下のページをご覧ください。

SITES 認証制度についての紹介

前回の重複にはなりますが、弊社代表もSITESの指導的立場(SITES AP: Accredit professional) であり、自社の仕事においてもサステイナブルなランドスケープデザインの設計・施工・管理を推進しています。

 

47007ac1927d9ec1d097cbeff11e7146 - 既存ランドスケープ空間に対するSITES Existing 認証のご紹介

弊社でもデザインや施工時の参考として利用しているSITES認証ですが、既存敷地を評価するSITES Existingとは一体どんな認証制度なのでしょうか?その概要をここに記しますので、読み進めて頂くことで内容がつかめるはずです。

SITES Existing 認証の正式名称は、Sustainable SITES Initiative Existing で、2025年に清水建設の「再生の杜ビオトープ」で日本初となる認証取得の事例が挙がるなど、今最も旬なランドスケープに対する国際認証です。詳しくは以下の清水建設ホームページをご覧ください。

https://www.shimz.co.jp/information/others/20250417.html

まだ試験運用的なPilot版ということもあり、知名度こそ通常のSITES認証と比較して劣るものの、現在ある屋外空間でのサステイナブルな取り組みを評価できる認証システムということもあり、今後のさらなる活用が期待されています。 本認証のフレームワークは、SITES認証同様にランドスケープエリアの設計・施工・管理をする際に、生態系を保護し、気候調節、CO2貯蔵、洪水緩和など、より良い生態系空間を作り維持するための10のセクションから構成されておりますが、違いとしては、設計時の内容については、修繕や今後の改修に対する設計・施工や、管理運用については実データを用いたパフォーマンスを評価するという部分に違いがあります。それら各項目を満たした点数の合計により、サーティファイド、シルバー、ゴールド、プラチナとランクが分かれるという部分に違いがあります。

SITES Existing 認証制度の詳細はまだ公表されていないものの、審査機関である米国のGBCIのホームページでは試験版の取得を検討してくれるパートナーを募集しています。

詳しくは以下のURLをご覧ください。

https://www.sustainablesites.org/be-part-sites-existing-landscapes-certification-pilot

認証をとることで、世界中に対して、現在管理している屋外空間が環境に配慮した改修デザイン・施工方針をもっており・実運営データで優れたパフォーマンスを示していることを公表できます。これによって実際の運用において生物多様性が豊かな敷地であることが証明でき、さらには人の健康を向上させ、地球温暖化を緩和させるような敷地であることを認証という形で実証できることに大きなメリットがあります。

認証が取れるプロジェクトは、1年以上の運用実績のあるすべての屋外空間と定められているため、通常のお庭でも適応可能です。もちろんですが、弊社で施工させて頂いたすべてのお庭が対象となります。小さなお庭だからSITES認証は大きな敷地に引っ越してから、とお考えだったお客様も既存版の SITES Existingであれば、今のお庭が管理運用面や修繕・改修計画含めて本当にサステイナブルな空間に仕上がっているかについて検討することが出来ます。

特に我々のようなデザインも施工~運用管理もするようなランドスケープのプロフェッショナルにとって、SITES Existing 認証は環境に配慮した修繕・保全・剪定・病虫害防除などについての示唆を与えてくれるだけではなく、補修時にどのような材料を使用することが環境に優しい管理になるのか、植栽管理時に最も環境に悪影響を与えないもしくはプラスの効果を与えるための方向性を示してくれます。

実際に中身を見てみると、設備的な部分の修繕や植栽の管理などの一部分に努力するだけではなく、包括的な配慮をすることが認証獲得に必要だということが分かると思います。

ここでは簡単に10のセクションの概要を示してみたいと思います。

1.敷地のコンテクスト

評価する敷地が、どのような場所に立地しているかを評価する項目になります。敷地内に農地や氾濫原、水界生態系や絶滅危惧種などが存在する場合は、適切に保護・保全をすることが求められます。

2.設計前アセスメント・プラン

将来的な改修計画に際して、多様な専門家が参加し、敷地の目標設定、調査、樹木が育ち多様性の生じているような部分には、植生と土壌の保護ゾーンの設定等を行い改修時に保護をする計画を立てます。

3.サイトデザイン – 水

現在の敷地において、敷地内で雨水を浸透貯留させたり、灌水の要らない植生になっているかなど、運営上のパフォーマンスを評価する項目となり、実データの収集・管理が求められます。

4.サイトデザイン – 土壌及び植生

現在の土壌や植物の保全、植栽は在来種を多く使用しているか、階層構造を生み出せているかなどを評価する要件となります。敷地内のヒートアイランド現象の緩和や、防風林としての役割を果たすことで加点となる項目もあります。

5.サイトデザイン – 材料選定

改修計画や補修時の購買方針として、絶滅危惧種の木材を使わないことが求められます。その他に、既存構造物を再利用したり、再生材を多く使用すること、材料調達は地元で行うこと、サステイナブルな原料調達を行っている業者を使用する等が項目として定められています。

6.サイトデザイン – 人の健康及びWell being

現在の敷地が、アクセスしやすく(バリアフリー等)安全であり、座ったり運動したりできるスベースであるかが問われます。畑などで野菜をつくれるか、夜間の生態系を脅かすような余分な照明がないかなども要件に含まれています。

7.施工

今後の改修段階に対する項目で、将来の敷地改修中に敷地から土砂・雨水・汚染物質などが流出しないようきちんと管理する計画が策定されているかを評価します。重機を使用する際は、低CO2排出機器であるかまた、既存敷地の解体などが行われる場合は、廃材の再利用なども評価対象になります。

8.運営及び管理

ランドスケープの維持管理において農薬や化学肥料を使わない自然に優しい管理であるか、維持管理器具はCO2を発生しないものであるか等を問う項目になります。

9.教育及びパフォーマンスモニタリング

プロジェクトサイトで行った環境に負荷を与えない開発を周辺や世界中の人に知ってもらうため、プロジェクトの公開やモニタリングの実施などが求められます。また、既存敷地について、経済的・環境的・社会的なメリットとなる特徴をデータと共に説明することが求められます。経済的メリットとしては例えば、敷地内で雨水を再利用することで水道水の削減が経済負荷を減少させるなどがあります。環境的メリットしては、生物多様性を高める植栽や維持管理によって訪れる野鳥類の向上などが挙げられます。また社会的メリットとしては、敷地を一般公開するなどして、訪れた方に癒しを与えることなどが考えられます。

10.  革新性

上記1~9の中では触れられていない革新的な取り組みで、サステイナブルな開発を実現している場合得点に繋がる項目です。

実際に上記を満たすためには、それなりの努力と知識・経験が必要となりますが、運用から1年以上経っている思い入れのある敷地であるからこそ、取り組みに価値があると思えます。これら項目を網羅することで、今あるランドスケープの改修・修繕計画及び施工の段階でサステイナビリティを向上させることが出来、実際に測定した炭素固定量や生物多様性などについての運用時のパフォーマンスを高めていくことでより良い環境づくりに貢献できます。

実際にSITES Existing 認証に取り組まないとしても、環境に負荷を与えない補修計画や全ての維持管理機器についてエンジンではなく電動機器を用いた管理(音もかなり静かです)によるCO2排出量削減等を率先して行っている弊社を選ぶことは地球環境を守る一歩に繋がるかもしれません。もちろん、弊社を通じてSITES Existing 認証に取り組みたいという方にはご支援・サポートすることが可能です。

ランドスケープの設計・施工・管理業者の方や、新たなお庭を検討されている方、既にお庭があるけどもっと良くしていきたいなどでお困りの方を含め、全ての方にとって SITES 認証及び SITES Existing 認証は役に立つはずです。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。