北岳への冬期合宿

中山諒二造園設計では、2021年 2月21 日(日)〜2月22日(月)に南アルプスの北岳に行ってまいりました。先週の合宿で農鳥岳から眺めた北岳が美しく、満場一致での決行となりました。これで、2週にわたる冬期合宿(?)です。

農鳥岳への合宿についてはこちらをご覧ください。

農鳥岳への冬期合宿

さて北岳は、南アルプスの北部に連なる白峰三山の最北にあることから、この名が付いています。富士山に次ぐ日本第2位の高峰で、標高は3192mになります。日本100名山にも選ばれており、日本を代表する山の一つと言えるでしょう。そんな訳で、シーズン中は登山客で賑わうため、静かな山を楽しむには冬が最適です。積雪の少ない年末時期や年明け間もない頃であれば1泊2日でも問題なく行けると思いますが、2月には雪が積もっており、非常に歩き辛いため時間と気持ちに余裕があれば2泊がおすすめです。

軽トラにて、まだ暗い中を運転をしていると早速アクシデントが。

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ベース地点まで向かう途中。倒木がありました。ここまでの過程でも道路にはたくさんの樹木の枝や幹が転がっていたため、前日に風が強かったことが予想されます。ここでは車1台は通れる幅だったため良かったですが、万が一に備えてチェンソーも車に常備しておいたほうが良さそうですね。

ベースに着いたら、そこからは15kmの道路を歩んでいきます。シーズン中はバスが出ているこの道も冬場は通行止めとなっており、歩きや自転車等で行く他、手段はありません。歩き初めの出発は、朝8時となりました。

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時には1kmを超える長いトンネルを進んでいきます。これだけ長いといろいろなことが考えられます。何を考えるかは自由ですね。

このような道を3時間程度歩いていくと、ようやく登山道が見えてきました。

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始まりはいつも苔むした岩と落ち葉。これが冬の南アルプスの景色。なのかどうなのかはわかりません。造園では、美しく染まった落ち葉を敷いてその風情を楽しむ「敷落ち葉」なるものがありますがその際は、美しく赤や黄に染まった葉を使用します。

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更に登っていくと、雪が積もってきました。緑とのコントラストが美しい。そういえば、北岳には多くの絶滅危惧種が存在しており、10以上の「キタダケ」を冠する和名の種が自生しています。例えば、キタダケイチゴツナギ、キタダケキンポウゲ、キタダケデンダ、キタダケトリカブトなど。これらは冬の間は見ることは出来ませんが、シーズン中には訪れた人を楽しませてくれます。保護して、後世に伝えていきたいですね。

ここからはやや急登です。凍結した登山道にアイゼンの爪を確実に刺しながら一歩一歩進んでいきます。

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そして視界が視界が開けた先には、白銀の世界が待っていました。右奥に見えるのが池山御池小屋です。シーズン中はここまでのハイキングを楽しむ人も多いようです。

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池山御池小屋は冬期も冬期小屋として開放されています。先を急ぐため、立ち寄らず通り過ぎようとすると扉が空いており、中からは話し声が聞こえます。気になって覗いてみると、登山客の姿がありました。本日はここで休み、明日北岳を目指すとのこと。ここからでは結構距離があるため、2月の雪深い北岳では大変かもしれません。(予想通り、この方々とは稜線ではお会いすることはありませんでした。)

さようなら、池山御池小屋。小屋を後にして、更に上に上にと歩を進めます。気がつくとだいぶ暗くなっていました。稜線に近づき風も強くなっていたため、この辺りでテントを張ることに。

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澄んだ空に夕焼けが美しい。今回は樹林帯での宿泊となるため、星空の撮影は断念。その代わり、ゆっくりと休むことに。朝は4時頃に起きることにして就寝します。強風で何度か目覚めながらも、休息を取る事ができました。

起床後、朝食を済ませ登山を開始します。時々膝上まで雪に埋まりながらも、急登を歩んでいきます。

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まだ暗い中、空が赤く染まってきました。姿を現してきた富士山。南アルプスに登る理由の一つが富士山を見られることですね。

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先週登った農鳥岳の稜線も見えてきました。美しき明けゆく空。

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そしていよいよ日の出。この瞬間にここにいられることに感謝。

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この地点で山梨から訪れているというSさんと再開。実は昨日も会っており、私のテント場の少し先にテントを張っていたのでした。そして私よりも早起きして出発していたというSさん。素晴らしいですね。日の出に感動しています。

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振り返ると、そこには焼ける北岳バットレスが聳えていました。これを見るためにここに来た、と言えるくらいに美しい。目指す頂上がそこにはあります。農鳥岳から眺めると北岳の尖った部分が際立つのですが、こちらから見ると丸っこい。強風に耐えながら景色を楽しみます。

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そして農鳥岳、間ノ岳のモルゲンロード。特に雪山では全てが赤く染まるため、この瞬間のみ、まるで別世界にいるような感覚になります。

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その後、日は昇っていき、山にも朝が訪れます。

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こちらにそびえる尖った山についてはSさんが解説してくれたのですが、忘れてしまいました。時間のあるときに調べて追記しておきます。DSCF17712 1024x683 - 北岳への冬期合宿

ボーコンの沢の頭を歩く、赤く点のように見えるのがSさん。こうしてみると北岳は大きい。この後Sさんを追い抜いたり、追い抜かれたりしながら進んでいきます。

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八本歯のコルと名付けられた岩場に差し掛かる前に、この山で亡くなった方を悔やむ遺族の言葉が目に飛び込んできます。「山で死んではならない」 その言葉が胸に染みます。20代の頃、自分が今よりもずっと山に通じていた頃、登山者の救助を手伝だったことがあります。その方は、その後ヘリコプターにてICUに送られましたが、残念ながら亡くなってしまい、非常に悲しい思いをしたものです。

悲しみを胸に先を急ぎます。ここから10m程度の懸垂下降。カメラが邪魔だったのでしまってしまい、写真はありません。そしてさらに進んでいく。

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振り返れば富士山と稜線。朝焼けの赤い世界とは対象の青い世界です。これもまた美しい。

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いよいよ分岐地点にたどり着きました。ここからは更に風が強くなります。体感風速30m。実際のところはわかりません。冬の富士山に登った時もこれくらいの風速だったかな? 風は自然を感じる重要な一要素ですね。

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そして、振り返る。この稜線が農鳥岳まで続いています。もう少し休みが取れれば、ここから農鳥岳までの縦走も出来そうです。

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そして頂上。記念写真を撮っておきます。とても眩しい。今回のウェアは中山諒二造園設計でもおなじみのモンベルのお手頃な雨具です。造園作業により既にいくつか穴が空き、雨が染み込んできますが、雪山では大丈夫でした。

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頂上付近より改めて稜線を撮影。あとは同じ道を戻るだけなので気楽です。ここからは造園的要素を探していくことにします。

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戻りがてらいくつかの印象的な景色と出会いました。富士山と落葉したダケカンバ。冬景色ですね。

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富士山と針葉樹。コメツガやシラビソだと思われます。高山の植物は作庭依頼の機会も特にないため、まだまだ勉強中です。。

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これは造園的風景!借景と石組み。石組みでも山の景色を再現しているように見えます。緑の苔がなおそれを引き立てる。

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そして樹林帯へと入り、テントを張った場所へとたどり着きました。

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時刻はちょうど12時。山を眺めながらお昼の休憩を取ります。本日下山予定としたのであまりゆっくりとは出来ません。その後手早くテントを撤収し、山を下っていきます。

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冬の北岳は下山後が長い。15kmの道のりを歩く中、壁画を発見しました。これはなにか動物のように見えますね。恐竜でしょうか?

辺りはすっかり暗くなりましたが、星明かりに照らされながら、地道に歩きます。

ありがとう、北岳! また会う日まで。

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