葉山 茅山荘のお手入れ
5月初頭、私の修行先であった金綱造園事務所よりお誘いがあり、神奈川県葉山市にある茅山荘のお手入れに参加しました。茅山荘は日本の曹洞宗の僧侶であり、曹洞宗国際センター所長でもある藤田一照さんが管理されており、藤田さんの坐禅会やお茶会などが開かれる際に一般に公開されています。藤田さんの情報はこちらからどうぞ:
私のいる小岩から車で約1時間半で到着しますが、そこには雄大な自然が広がっています。茅葺屋根の門を潜り敷地の中へ。新緑が光に照らされて輝いています。茅葺屋根も緑で覆われ、自然と一体化しているようです。
このような山の中にある場所であってももきちんと秩序立てて管理していくことで、人が心地よく過ごすことの出来る空間になるのでしょう。紅葉の流れるような枝や地面を覆うようにはえる笹が出迎えてくれます。前にいるのは同門の塩野さん。以前に私の庭造りを手伝いに来てくれました。
折角、久しぶりに訪れたので親方の庭を拝見しようと茶庭に向かいます。まずは茶庭に向かうアプローチ部分から。趣のある延段が出迎えてくれます。視線を遮るように建てられた黒穂垣は最近新調したもの。周囲と一体となる垣根を見ると、自然地には自然素材のものが合うと感じさせてくれます。
こちらは黒穂垣メインで撮影したもの。新緑との相性もとても良く場を引き締めています。黒穂の質もとても良いようで、フサフサ感がたまりません。びっしりと詰められていることが分かります。
垣根を抜け、茶庭の露地へと入るとそこはまた違った景色となります。土塀・垣根そして雑木が日陰を作り、そこに低木・地被がバランスよく配置されることで、木漏れ日のある厳かな空間になっています。流れるような飛び石が視線を前に向かわせます。根付き生い茂る樹木や元気の良いシダが時の流れを感じさせます。
歩を進めると中潜及び内露地が顔を覗かせます。周囲の緑に囲まれ、まるで山の中に佇んでいるかのように錯覚させられます。雑木といってもコナラや、紅葉などの落葉樹やシラカシ、シロダモなどの常緑樹だけではなくヒノキなど針葉樹も織り交ぜることで一層自然の雰囲気を高めることが出来ます。
蹲や役石も緑の苔に覆われ、太古の昔からそこに存在していたかのような表情を見せてくれます。敷地内に流れる川や山の湿気・そこに周囲を覆うことで直射日光を避けながらも適度な日が差し込み、苔を生育させます。この部分は枯れ流れになっている現在の景色も美しいのですが、降雨時や儀式の際には水を流すことも可能で違った表情を見せてくれます。
茶庭を堪能した後は、本日の仕事に入ります。茅山荘は周囲を雑木や竹林に覆われた緑溢れる環境に建てられていることは先にも述べましたが、昨年の台風の影響で荒れてしまっているため、その箇所の整備を行います。竹林は人によって管理されることで成り立つため、手を入れていくことは必要不可欠です。
倒れた竹を運ぶことはもちろん、今後成長によって周囲に悪影響を及ぼしかねない竹も伐採していきます。放っておくとこのように台風などで倒れ、景観を乱すばかりか、あちこちへと広がっていき自然環境を改悪してしまう可能性もあるため、適宜間引き広がりすぎないように管理していくことが大切です。今回伐採したのは、孟宗竹で日本に存在する竹の中では最も大きくなる竹です。67年に1回花が咲くと言われていますが私はまだ、花を見たことはありません。計算上では一生に一回は見ることができそうなので、これからですね。
作業を終え、名残惜しく見返した地山荘へのアプローチ。また来いよ、と枝を広げた木々が言ってくれているかのようです。
久しぶりに懐かしく、逞しい庭師の面々を拝見でき、充実した一日となりました。
私も、ここから頑張っていきます。